Photo No. 20


シカゴの街で学生だった頃、ある日曜の朝、シカゴのオフィス街に散歩に出た。 日曜の午前にはオフィス街には全くと言っていいほど人影がなかった。 歩きはじめてしばらくたった頃、大きな入り口を構える建物の前にいた。 ふと目を上げると、はるか頭上まで続く窓の並びに目を奪われた。 窓の列は、ビル街の狭い空へと続いていた。 イカロスの翼、ジャックとまめの木、人間が上に向かって天を目指したという話は、数多くあった。 このビルが建った理由は、ただ単に街の中心地に土地が少ないという現実的な理由だったからにちがいない。 ただ建てた当の本人にとってだけは、もしかしたらその理由は違っていたのかもしれない。

このレンズはとてもシャープなレンズだ。特に少し絞ってF8を超えたあたりからは、 おもわず息をのむほどの解像度が出る。銀座で手に入れてからもう十年以上になり、 その素性を良く分かっているつもりではいても、このレンズに付け替えた時ファインダーの向こうに広がる シャープで遠近感が強烈に誇張された世界に驚かされることが何度もあった。

人間の目で見て、ふと広がる奇妙な奥行きを持った場所というところにたまに出くわすことがある。 そんな時にこのレンズを使ってその景色を切り出すと、何故その時にそう感じたのか後になってからはっきり わかる。

Lens: Konica Hexanon AR 24mm F2.8
Specs: F8, 1/60
Film: Kodak Ektar 25 (CH)
Date: April 18, 1994
Place: Chicago, Illinois, United States