Photo No. 008


先日、50mm F1.7の修理が思いのほかうまく行ったことに味をしめて、2本目の修理に手をかけた。
こちらは60年代末、ちょうど現在のARマウントに移行してすぐくらいに発売された往年の高級モデル。 シリアルは7343104。
ARマウントのものでありながら、製品名にもまだ「AR」が冠されていないところからも、マウント移行後のほぼ最初のレンズである事が分かる。

このレンズもオークションではジャンクということだったのだけど、外観は前回のものより良さそうだった。
外観は良かったのだけど、手に取ったときにフォーカスリングがスカスカ。
あ、もしかしたら今回は治せないかも、と嫌な予感に襲われる。
鏡胴を分解すると、中からどこかから破断した部品が、コロンと転がり出てくる。
果たして不吉な予感が的中したことを知る。
折れ曲がった部品、凹んだ部品というのは案外簡単にどうにかなるが、完全に破断してたり潰れてしまったものは代わりの部品を作るしかない場合が多い。
マウント部と先鏡胴を同じ位置で浮かせておくための金属のピンが折れていた。
半田で繋ぐも強度が出ない。溶接するも、余分な厚みが出てしまって今度は無限遠がでない。
見かけのきれいさとは裏腹に本当にてこずった。
最後は真鍮の板から削り出しで代替部品を作った。
部品が結構正確に削り出せたと喜んでいたら、ネジ溝を切るメトリックタップが近くの店を探してもどこにもない (住んでいるお国柄インチタップばかり)。
その間二ヶ月ちかい試行錯誤の連続、擦った揉んだした挙げ句の果てになんとか復活した。
見方を変えれば、こんなレンズ一個で二ヶ月近く楽しめた、という言い方もできるのだけど、最後まで本当に復活できるのか不安だらけだった。

それでも完成後の初めてのテスト撮影の結果は、思いのほかよかった。
Hexanon通の某氏によると、すこし解像に甘さがあるソフトなレンズという評だったけど、
ハッとさせられるような立体感と解像度が印象的。コッテリ、濃厚、色のりも強めの、結構派手目のレンズ。 喩えて言えば、昔の「ハイカラさん」のようなレンズ。
現代の描写が安定しているレンズとの一番大きな違いは、光線状態や被写体によっていろいろな描写を見せるところ。
飛ぶ寸前のハイキーの部分と背景のエッジも奇麗に立っているし、暗く沈んだ背景もとても澄んでいる。

Lens: Konica Hexanon 57mm F1.4
Specs: F2, 1/30
Film: Kodak Ektar 100 (CX)
Date: May 12, 2010
Place: Rockford, Illinois, United States